バーチャルオフィスは、自宅の住所を公開せずにビジネス用の住所を持つことができるサービス。月額数千円から利用することができるため、主にビジネスを始めたばかりの法人や個人事業主たちに人気です。
ニーズに応じて「郵便転送」や「電話番号」「ワークスペース、会議室の利用」などといったオプションサービスを使うことができるため、個室のオフィスを借りることなくビジネスを始められるという点が大きな魅力です。
しかし、どんな業種でもバーチャルオフィスと相性が良いわけではありません。
ここでは、バーチャルオフィスの利用に向いている業種と向かない業種を比較し、どのような利用方法があるのかを見ていきましょう。
まず最初に、バーチャルオフィスとはどんなサービスなのかを説明しましょう。
バーチャルオフィスとは名前の通り「仮想の事務所」であり、事業上の住所を利用することができるサービスです。実際、自宅やクライアント先で仕事をし、固定のスペースが必要ないという事業者たちに人気です。
運営する会社によってサービス内容やその品質は様々ですが、代表的な機能としては郵便物転送や電話番号の利用、会議室の利用などがあります。固定のデスク等は基本的には利用できませんが、オプションサービスとして利用することができるバーチャルオフィスも増えているようです。
バーチャルオフィスを利用するメリットは、なんと言ってもコスト面。東京都心部の賃貸オフィスを利用する場合、初期費用は数百万円以上かかるといわれており、三井不動産のデータによると丸の内・大手町エリアの募集賃料平均で40,360円/坪・月とかなり高額。バーチャルフィスはそういった初期費用がほとんどかからず、月額の利用料金も数千円からとリーズナブル。イニシャルコストを抑えたい経営者にはおすすめのサービスと言えるでしょう。
では、どのような業種がバーチャルオフィスの利用に向いているのでしょうか?
・エンジニア
・プログラマー
・アプリ開発
<point>客先で作業をすることが多い場合、固定のオフィスがなくても業務に支障が出ない。デスクワークをする時やミーティング、来客の際は、バーチャルオフィスのオプションでワークスペースや会議室を利用するという手段がある。
・Web制作、運営
・ネットショップ
<point>Web関連の業種の場合、PCがあればどこでも作業が可能なため自宅やカフェを利用して仕事をしている人が多い。IT関連の業種と同じく、ミーティングや来客対応時にはバーチャルオフィスのスペースを利用できる。
・デザイナー
・ライター
・編集者
・イラストレーター
・ブロガー
・カメラマン
・翻訳家
・漫画家
・番組制作
<point>仕事用の事務所を持たず、自宅で作業をする場合が多いクリエイター業。専用の機材や道具を扱うことも多く、自宅で作業をするメリットが大きい。しかし、自宅の住所を事業用に使用するとなると、HPや名刺で住所を公開する時に不安を感じる人も。バーチャルオフィスを利用すれば事業用の住所を使うことができるため個人情報に関する不安を解消できる。
・スタイリスト
・カウンセラー
・マッサージ
・ネイリスト
・コンサルティング
<point>スタイリストやカウンセラーなどの技術職の場合、施術をするスペースが必要となる。バーチャルオフィスの個室やミーティングスペースを利用したり、客先に出向いたりという働き方が特徴。東京の一等地に住所を持つことができるため、全国に顧客を作りやすい。
すべての業種がバーチャルオフィスをするのに向いているというわけではありません。ここからは、バーチャルオフィスの利用が向いていない業種の例を見ていきましょう。
<point>カフェやレストランのように店舗が必要な業種は、バーチャルオフィスの住所だけでは事業が成り立たない。しかし、お弁当の配達や食材の通販といった事業であれば、厨房や倉庫を別の場所に設け、会社の住所だけ東京に持つこともできる。知名度の高いエリアに住所があったほうが、全国にファンがつきやすい。
<point>税理士、司法書士、弁護士などの士業の場合は事務所の登録が必要となる。独立スペースがあることや、共同の建物の登録でないことなど業種によっても細かく規定があるため、バーチャルオフィスの住所では登録が認められない可能性が高い。
<point>東京都の「建設業許可申請の手引き」によると、営業所に関しては「 契約の締結等ができるスペースを有し、かつ、居住部分、他法人又は他の個人事業主とは間仕切り等で明確に区分されているなど独立性が保たれていること」と明示されている。独立した事務スペースが確保されているレンタルオフィスの場合は営業所として認められるケースがあるが、他の事業者とスペースを共有している場合は難しい。よって、バーチャルオフィスの住所では許可申請が通らない可能性が高い。
<point>都道府県や政令指定都市における許可を受けて事業を行う必要がある。その際、事業を的確かつ継続的に行うことができる事業所が必要とされているため、バーチャルオフィスでは基準に満たない可能性が高い。
<point>公安委員会の許可が必要な業種であり、独立した営業所があることが条件となっている。取引先といつでも会うことができる営業所を用意しないと、許可申請が通らない可能性が高い。
<point>都道府県の許可が必要な業種。接客することができる独立したスペースが条件となっている。間仕切りがあるレンタルスペースならば認められるケースがあるが、住所だけ借りるバーチャルオフィスでは難しい。
<point>投資運用業や投資助言業など、投資に関連する業務を行うためには財務局に登録する必要がある。営業所を用意し、定められた標識を掲げることが必須となるためバーチャルオフィスでは難しい。さらに、事務所の図面や職員の席まで申告する必要があるため、賃貸オフィスで事業を始めるのが前提となるだろう。
バーチャルオフィスの利用を考えている方は、業種以外にも事前にチェックしておいたほうが良いポイントがあります。それは、会社の名称です。
利用を検討しているバーチャルオフィスに、同名もしくは似ている屋号の会社や個人がいないかを確かめておきましょう。「株式会社A」と「A株式会社」はほぼ同じ名称ですが、法律的には登記が可能です。
似ている社名が同じバーチャルオフィス内に存在すると、郵便物を混同したり電話の取り間違いに繋がる可能性があります。バーチャルオフィスに見学に行った際に、運営者にしっかりと確認をしておきたいポイントです。
そして、バーチャルオフィスの信用性も大切な判断基準です。事前審査を行わずに利用者を募っているバーチャルオフィスの場合、会社の住所が実は詐欺グループに悪用されていた!という事例もあります。同じ住所を使うわけですから、自分とは全く関係のない人の悪業が、自分の会社の信用に関わってくるのです。
事前審査無しで入れるというのは一見すると魅力的に聞こえるかもしれませんが、会社の将来を考えると、丁寧に審査を行っているバーチャルオフィスを利用したいものです。
良いスタートを切るためにも、事前のリサーチや見学を行うことをおすすめします。