地方で事業を行なっている方の中には、東京への進出を狙っている方も多いと思います。
しかし東京での新たなスタートのネックとなるのが、オフィスの賃料。多くの経営者たちが東京進出を躊躇ってしまう原因の一つに、場所代が高いという事情があるのです。
千代田区や港区など一等地ともなれば、賃料は地方のオフィスの倍以上。できるだけコストを削減したいと考えるスタート時には、無視することができない出費です。
国土交通省が2019年3月に発表した内容によると、東京都の地価は前年と比べ4.2%上昇したそうです。上昇の背景には外国人観光客の増加があり、6年連続で上昇しているということです。
東京の一等地に低コストでオフィスを持つことは不可能なのでしょうか?
実は、この問題には打開策があります。
「バーチャルオフィス」を活用すれば、リーズナブルな料金で都心で会社を構えることができるのです。
専用の業務スペースを借りることができる賃貸オフィス。“会社のオフィス”というと、この賃貸オフィスが一般的なイメージではないでしょうか。
賃貸オフィスの最大メリットは、なんといっても自社専用のスペースで業務に集中できることです。シェアオフィスのように他の事業者が出入りすることはなく、デスクトップPCや書類も置いて帰ることができます。また、オフィスの住所に法人登記できるほか、建物内のラウンジやカフェを使用できるという利点もあります。
賃貸オフィスならではの様々なメリットはあるものの、限られた資金でやりくりしなければいけないスタート時にはなるべく出費を抑えたいですね。
オフィス賃料は駅からの距離や坪数によって大きく異なりますが、港区や千代田区のような東京の一等地にある小規模のオフィスを借りた場合は、月額およそ20万円以上の賃料を見込んだほうが良いでしょう。
また、月々の賃料以外にも初期費用がかかるケースがあります。こちらも物件ごとに差はありますが、入居前に賃料の6〜15ヶ月分の費用が必要になると考えておいたほうが良いでしょう。
都内の賃料相場の低いエリアにオフィスを構えるという選択肢もありますが、アクセスが不便な立地だったり、都心の一等地に比べると住所のイメージは劣ります。会社の所在地はできれば妥協したくないところです。
なるべく低コストで東京にオフィスを持ちたいと考えている方には、バーチャルオフィスがおすすめです。
バーチャルオフィスとは、賃貸オフィスと違い「住所」や「電話」など必要なサービスだけレンタルすることができるオフィスのことです。
初期費用を抑えて事業をスタートさせることができるため、初めて起業しようと考えている方や地方から東京への進出を検討している会社にとって利用しやすくなっています。
レンタルオフィスと同様、運営会社によって利用料金に差はあるものの、千代田区や港区、渋谷区など一等地の住所を月額わずか数千円から使うことができるのです。
また、サービス内容も運営会社によって様々。マンションの一室で運営しているところもあれば、有人の受付を設け来客対応までしっかりと行なっているオフィスもあります。オプション料金を支払えば、会議室やワークスペースを使用できたりと、レンタルオフィスに劣らない機能を持つバーチャルオフィスも登場し始めています。
では、賃貸オフィスとバーチャルオフィスでは、費用にどれくらいの差があるのでしょうか?
以下は、東京の一等地にある20坪の賃貸オフィスとバーチャルオフィスの費用の例です。
賃貸オフィス:250,000円
バーチャルオフィス:5,000円
賃貸オフィス:150万円(保証金、敷金、礼金、前家賃、前共益費、仲介手数料、火災保険料、保証会社利用料等)
バーチャルオフィス:50,000円(入会金、保証金)
賃貸オフィス:数十万円〜数百万円
バーチャルオフィス:0円
賃貸オフィス:数万円〜数十万円
バーチャルオフィス:0円
賃貸オフィス:2,000円
バーチャルオフィス:0円
賃貸オフィス:数千円
バーチャルオフィス:0円
賃貸オフィスを借りた場合は月々の賃料以外にも、敷金・礼金や内装費用、備品購入費用などがかかるため、数百万円の資金を準備しておかなくてはいけません。
一方、バーチャルオフィスを利用した場合は、設備にコストがかからないため入会金と保証金の数万円だけ準備しておけばビジネスをスタートすることが可能です。
また、バーチャルオフィスでは電話の転送サービスや郵便物の即日転送サービス、会議室やワークスペースの利用といったオプションサービスを設けているところがあります。
必要なサービスのみ選ぶことで、月々の経費を節約することができそうですね。
事務所やテナントを持たなくても低コストで起業することができるバーチャルオフィスですが、業種によっては利用できない場合があります。特に、行政機関への届け出や許認可が必要な業種の場合は違法になってしまうこともあるので、バーチャルオフィスを検討する前によく確認しておくことが大切です。
◆人材派遣業
一般労働者派遣事業の場合は20平方メートル以上の事業所が必要。
特定労働者派遣事業の場合は面積の決まりはないが、実体のある事業所を求められる可能性が高い。
◆職業紹介業
実体のある住所の届け出が必要。
◆司法書士、税理士、弁護士などの士業
実体のある事務所の登録が必要。
◆建設業
契約や見積もりができる事務所が必要。
◆廃棄物処理業
事業を的確かつ継続的に行うために問題ない事業所が必要。
◆古物商
独立した営業所が必要。
◆不動産業
接客スペース等を設けた独立した営業所が必要。
◆探偵
実体のある事業所の住所を警察に届け出ることが必要。
◆風俗営業
公安委員会が監視を行うため実体のある事業所が必要。
◆金融取引業
標識を掲げることができ、問い合わせや監督官庁の照会にも対応できる環境が必要。
一方で、バーチャルオフィスと相性の良い業種もあります。
◆IT関連の業種
・エンジニア
・web制作
・プログラマー
・ネットショッピング
◆制作関連の業種
・デザイナー
・ライター
・カメラマン
・編集者
・翻訳家
◆接客時だけ場所が必要な業種
・コンサルタント
・カウンセラー etc.
ITや制作関連の業種は、場所を問わず仕事ができる場合が多いため、最低限の機能を選んで使うことができるバーチャルオフィスとは相性が良いと考えられます。また、個人や少人数で運営している事業者や、リモートワークを行なっている企業、法人化を目指しているフリーランスのニーズにも適しているのではないでしょうか。
バーチャルオフィスを活用すれば、東京でビジネスをスタートする時にコストを節約することができます。
都心には数多くのバーチャルオフィスが存在しているので、自身のビジネススタイルに合ったバーチャルオフィスを選ぶことも重要です。
まずはバーチャルオフィスを見学し、実際にオフィスの様子を確認したり運営会社の方針等を確認してみることをおすすめします。料金に加え、所在地やオプションサービスの充実度、審査体制がしっかり整っているかどうかもオフィス選びの判断材料になります。下調べを行い、安心してビジネスのスタートを切りたいですね。