東京都心部でビジネスをするなら、23区外をはじめ、埼玉や千葉、神奈川など、郊外のエリアに自宅を構える人が多いのではないでしょうか。
自営業者であれば、自宅に会社の住所を登記して自宅兼事務所というスタイルを選ぶことが可能です。そうすることで、東京の一等地にオフィスを構えるよりも経費を削減できるというメリットがあります。
しかし、会社のイメージを優先するならば、やはり東京の一等地に会社の住所を持ちたいというのが本音では?
「会社を都心部に構えたいけれど、場所代にコストをかけたくない」
そんなニーズを持つ人に利用されているのがバーチャルオフィスです。バーチャルオフィスとは、事業上の住所や電話番号のみ使うことができるサービスのこと。
この記事では、法人登記するなら自宅とバーチャルオフィスどちらが良いのか、それぞれのメリットとデメリットを比較して考えていきたいと思います。
まずは、東京郊外の自宅に法人登記をする際のメリットとデメリットについて見ていきましょう。自宅を登記先にする場合、手軽で費用もかからず、メリットだらけのように思いますが、実際は……?
コストがかからない
東京郊外であれば都心部に比べて住宅にかかる費用は安くなります。
さらに、自宅に法人登記をすると家賃や光熱費の一部を会社の経費として計上できるため節税対策にもなります。また、オフィスを借りた場合はデスクやプリンターなどの事務用品を新たに用意する必要がありますが、自宅であればそういった準備もいりません。
煩雑な手続き無しに開業できる
賃貸オフィスを利用する場合、入居にあたり会社概要や登記謄本などの書類をもとに会社の信用調査が行われます。信用調査をクリアした後は、手付金を納めたり賃貸契約書の確認をする必要があります。自宅で開業すればこういった手間がかかりません。
通勤の必要がなくなる
自宅が事務所になれば、通勤の必要はありません。通勤にかかる時間を業務に充てることができ、作業効率が上がります。また、仕事をしながら介護や子育てがしやすくなるという良さもあります。
住所の知名度が都心に比べて劣る
東京郊外の住所は、港区や中央区などの一等地に比べると知名度が劣ります。会社の住所は会社のイメージと直結するため、誰もが知っている地名に登記したほうがビジネスをする上で有利といえます。
金融機関や取引先からの信用を得にくい
自宅住所と会社の住所が同一になっている場合、金融機関や取引先からの信用を得にくいというケースもあります。そういった意味では、自宅と会社の住所は分けておいたほうが安全かもしれません。
会議や来客時は外に出る必要がある
自宅を事務所にしている場合、会議や来客対応時に適切な場所を用意することが課題となります。自宅に会議室まで併設している方はあまり多くないと思います。そのため、会議のたびに外出して場所を探したり、都内で打ち合わせが入れば移動時間と交通費がかかります。
自宅の住所を知られてしまう
ホームページやパンフレットには、会社の所在地を記載するのが通例です。自宅の住所に登記している場合、多くの人に自分の居住地を知られてしまうおそれがあります。プライベートを守りたい方にとっては無視できない問題かもしれませんね。
物件によっては法人登記ができない
住居用として貸し出している物件の場合、法人登記ができないケースがあります。集合住宅の一室を事業用にしてしまうと、不特定多数の人が出入りすることになるため、保安上の理由から事務所利用不可としている物件は多いようです。
法人登記および事務所利用が可能かどうか、事前に大家さんや不動産管理会社に確認をしておいたほうが良いでしょう。
「バレないから良いだろう」と無断で法人登記してしまうと、強制退去を迫られる可能性もあります。なお、一軒家に住んでいる場合はこういった心配はありません。
自宅開業では許認可が受けられない業種がある
自宅に法人登記した場合、許認可が受けられない業種もあります。玄関に商号を表示する義務があったり、独立した事務室を確保する必要がある業種は自宅開業が難しいのです。打開策として自宅とは別に事業所を借りて許認可を取得する方法があります。
次に、都心のバーチャルオフィスに法人登記する場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。都心部に住所を持つことができるバーチャルオフィス。「バーチャル」ですが、法人登記には向いているのでしょうか?
利用料金がリーズナブル
住居費やオフィス賃料に比べると利用料金が月額数千円〜とリーズナブル。東京都心部にオフィスを借りると多額の初期費用や月額数十万円の賃料がかかってしまいます。バーチャルオフィスは資金が少ない創業時にはぴったりのサービスといえます。
東京都心の一等地に登記できる
港区、千代田区、渋谷区、新宿区など東京の一等地に住所を構えるバーチャルオフィスに法人登記すれば、会社のイメージもアップします。知名度の高いエリアでビジネスを始めることで会社の信用性が増し、取引先を拡大できる可能性も高くなります。
23区の各エリアにかなりのバーチャルオフィスが存在するので、選択肢もかなり広く持つことができるでしょう(参考:東京バーチャルオフィス大辞典「23区のまとめ」)。
会議室やワークスペース併設のバーチャルオフィスも
バーチャルオフィスといっても住所を貸してもらえるだけでなく、オプションサービスで会議室やワークスペースを設けているところもあります。取引先を招く場合も、しっかりとしたスペースがあることで会社の印象が良くなるはずです。
自宅の住所を公開しないので安心
バーチャルオフィスに登記すれば、自宅の住所を公開する必要がないのでプライバシーを守ることができます。
法人口座を開設できる
社会的信用性の高いバーチャルオフィスであれば、法人口座を問題なく開設することができます。運営会社によっては法人口座の開設実績を公表しているところもあるので、事前に調べてから契約することをおすすめします。
電話、郵便の転送サービスなどを利用できる
バーチャルオフィスを利用すると電話や郵便のサービスを受けることができます。自宅の住所や電話番号を公開せず、電話や郵便を取り次いでもらえるので安心です。運営会社によってプランや料金は異なるためよく比較して契約したほうが良いでしょう。
通勤の必要がなくなる
郊外の自宅に登記した場合のメリットと同様、バーチャルオフィスを利用した場合も通勤せずにビジネスを行うことが可能です。基本的な業務が自宅で行える業種であれば、必要な時だけバーチャルオフィスのオプションサービスで会議室やワークスペースを使うという方法もあります。
利用するには審査が必要
バーチャルオフィスを利用する場合、契約前に審査を行う必要があります。自宅の住所に法人登記をすれば審査や契約の手間がかからないため、これはバーチャルオフィスのデメリットともいえます。
しかし、丁寧に審査を行なっているバーチャルオフィスほど信用性が高く、安心してビジネスを始めることができるのです。中には審査無しで利用できるバーチャルオフィスもありますが、住所が悪用されている可能性もあるので注意しましょう。
運営会社によってサービス品質の差がある
バーチャルオフィスと一口に言っても、運営会社ごとに品質の差があるのが実情です。会議室を設けていても十分なスペースではなかったり、料金の説明を事前にきちんと行なわなかったり、見学して初めて気づくこともあるでしょう。
「住所が東京の一等地だから」「料金が相場より安いから」という理由だけで契約するのではなく、契約前に現地へ足を運びサービスの品質や料金の詳細、オフィスのグレードなどをよく確認しましょう。
業種によっては許認可が受けられない場合がある
自宅に法人登記する時と同様、バーチャルオフィスでは許認可が受けられない業種があるので注意しましょう。
書類やPCは置けない
バーチャルオフィスには自分のデスクやロッカーがないため、事務所に書類やPCを置いておくことはできません。バーチャルオフィス内の会議室やワークスペースを利用する際は、仕事道具を持ち運ぶ必要があります。
東京郊外の自宅にもバーチャルオフィスにも、それぞれメリットとデメリットがあります。
自分のワークスタイルに合わせて登記先を選択するのがベストですが、「オフィス賃料が高いから」という理由で東京都心部にオフィスを構えることを諦めている方は、リーズナブルな料金で利用できるバーチャルオフィスをおすすめします。
「バーチャル」という名前の印象が強いですが、実際にはビルの中にあり、受付や会議室を設けているバーチャルオフィスも存在します。機能が充実したバーチャルオフィスであれば、会社としての体裁を保つには十分です。
どこに法人登記するか迷っているという方は、自宅や賃貸オフィスと平行して、バーチャルオフィスの利用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。